豊かな香りで料理を引き締め、食の魅力をより奥深いものにしてくれるスパイス。近年は、世界各国の料理を出すレストランが増えたこともあり、私たちにとってより身近なものとなってきました。なかでもカレーはスパイスが豊富な料理として知られており、なんと10〜30種類も含まれているのだとか。ほかにもエスニックやタイ料理、中国・四川料理など、辛い料理の多くにはスパイスが含まれています。
スパイスは香りがよいだけでなく、昔から健康にも役立てられてきました。古代エジプトやギリシャ、ローマにおいて、スパイスは料理や化粧品用としてだけでなく、薬としても珍重されていたそうです。実際、紀元前1世紀ごろにローマの美食家アピシウスが書いた「料理について」という本では、スパイスの消化促進作用について詳しく紹介されています。
現在でも、スパイスは薬の成分としても重宝されています。漢方薬が手元にある人は、パッケージに書かれた成分表示を見てみましょう。「ケイヒ、ウイキョウ、チョウジ」などと書かれていますが、ケイヒはシナモン、ウイキョウはフェンネル、チョウジはクローブの別名。漢方薬には、たくさんのスパイスが含まれていることが分かるでしょう。また、インドの伝承医学「アーユルヴェーダ」でも、スパイスとハーブを混ぜた液体をこすり付けてマッサージをしたり、カレーをはじめとするスパイスたっぷりの料理を食べるなどの処方が用いられています。
ショウガやトウガラシ成分が入ったサプリメントも便利
漢方やアーユルヴェーダに縁がない人でも、風邪のひき始めにショウガ湯を飲んだり、寒い日にトウガラシが入った料理を食べた経験はあるのではないでしょうか。ショウガ、つまりジンジャーは、最も古くから珍重されているスパイスの一つです。体を温めて風邪の症状を抑える効果のほか、二日酔いや乗り物酔いを防ぐ効果、脂っこい食べ物の消化を助ける作用などが認められています。一方のトウガラシは、
ダイエット効果で人気。これは、トウガラシの種付近に含まれている「カプサイシン」という成分に、血液の循環を活発にする効果があるとされているからです。そのため、体温が上昇して汗をかき、運動した後と同じような状態になるのです。
忙しい人や手軽に摂取したい人は、サプリメントを買う、という方法もあります。店頭や通信販売では、ショウガのエキスが入った錠剤やターメリックを配合した栄養ドリンクなど、さまざまなサプリメントが手に入ります。また近年、カプサイシンと同様の作用があるにもかかわらず、辛味がほとんどない「カプシエイト」という新成分が発見されました。こうした成分が入ったサプリメントなら、辛いものが苦手な人でも安心して利用できるでしょう。
自宅での料理にもスパイスを取り入れて レストランで食べる料理だけでなく、自宅で作る料理にスパイスを取り入れるのもいいでしょう。最近は、トウガラシやジンジャーなど日本人にとってなじみ深いものだけでなく、世界各国の珍しいスパイスがスーパーなどで簡単に手に入るようになってきました。スパイスを選ぶコツは、とにかく新鮮なものを選ぶこと。スパイスは香りが命ですから、古くなって香りが弱まったものを使ってもまったく意味がありません。
お店には、原型そのままの“ホール”や手軽に使える“粉末”、数種類のスパイスを混ぜ合わせた“ミックススパイス”など、さまざまな種類のスパイスが並んでいます。それぞれ一長一短ありますが、香りを最大限に楽しむならホール状のものがお薦め。スパイス専用の道具を持っていなくても、普段使っているすり鉢とすりこぎを使えば、簡単にすりつぶすことができます。また、コリアンダーやクミン、サンショウなどの実や種は、すりつぶす前に中火で5分ほど煎(い)ると、香りや味わいが格段に違ってきます。
カレーを作るときにコリアンダーやクミンを入れたり、豚の角煮にスターアニスを加えると、料理の出来がぐっと本格的に変身するはず。ほかにも、ジンジャーを加えた「ジンジャークッキー」や、カルダモンを入れた「カルダモンコーヒー」など、スパイスは多彩な料理に活用できます。食生活を豊かにしてくれるだけでなく、健康パワーも与えてくれるスパイス。普段の生活に、積極的に取り入れてみてはいかがでしょう。
| 名称 | 特徴 | 主な効果 |
| トウガラシ | 刺激が強いものから比較的マイルドなものまで、さまざまな種類がある。辛み成分「カプサイシン」は、新陳代謝を促す効果で有名。 | 消化促進、 発汗促進 |
| ジンジャー | 日本では生のまますりおろし、薬味として使われることが多い。海外ではクッキーやケーキ、飲み物の材料にもされている。 | 風邪予防、 保温効果 |
| コリアンダー | 独特の香りとほのかな辛味があり、カレーに欠かせないスパイス。タイ料理では「パクチー」と呼ばれている。 | 消化促進、 解毒 |
| ターメリック | 鮮やかな黄色が特徴。カレー粉の主原料として使われるほか、たくあんなどの着色料としても利用されている。 | 消化促進、 肝機能強化 |
| カルダモン | 爽やかな香りで肉・魚料理の臭みを消すほか、ソースやドレッシングにも利用されている。中東ではカルダモンコーヒーが人気。 | 消化促進、 口臭消し |
| ナツメグ | 香りが強く、甘く爽やかな印象。ハンバーグなどのひき肉料理やカレー、ケーキ、焼き菓子などに使われる。 | 下痢止め、 健胃 |
| スターアニス | 中華料理に欠かせないスパイスで、別名「ハッカク」。肉の臭みを消すので、煮込み料理などによく使われる。 | 鎮痛、健胃 |
| クミン | カレーの香りのベースとなるスパイス。ほかにもメキシコやトルコ、東南アジアなど世界各国の料理に用いられる。 | 消化促進、 下痢止め |
| レモングラス | レモンに似たフレッシュで引き締まった香りが特徴。スープの香り付けのほか、ハーブティーとしても利用される。 | 疲労回復、 健胃 |
| サフラン | 贅沢な香りと甘みが楽しめる世界最高級のスパイス。サフランライスやパエリアのほか、菓子の材料にもなる。 | 消化促進、 鎮痛 |
参考文献:スパイス完全ガイド最新版(山と渓谷社)